初めての確定申告 領収書捨ててしまった場合どうする?後編
前編では領収書等の保存がない場合の決算書を作成する最終手段について書きました。
今回は「税務署が領収書のない経費を認めてくれるのか」について書いてみます。
これについても、前編記事同様に個人的見解ですので、本記事を参考にされた結果、読者の皆様に損害が生じたとしても、責任を負うものではないことを改めて申し添えておきます。
本題に入る前に、「申告納税制度」について説明します。
現在の国税の多くは「申告納税制度」を採用しています。
申告納税制度というのは「納税者自ら税務署へ所得などの申告を行うことにより税額を確定させ、この確定した税額を納税者が自ら納付する」というものです。
簡単にいうと、自分で税金を計算し、税務署に「今年の私の税金は○○円です。」と申告した上で、その税金を払うということです。
国税の多くと書いたとおり、所得税に限らず、消費税、法人税、相続税なども同じ制度で成り立っています。
この申告納税制度の真逆に位置するのが、「賦課課税制度」といって行政機関の処分により税額が確定する方法です。
これも簡記すれば、語弊があるかもしれませんが、有無を言わさず(笑)行政政機関から納税通知書が送られてきて、その通知書に書かれた税金を払う方法です。
加算税、延滞税、個人住民税、個人事業税、固定資産税、自動車税などがあてはまります。
話を戻します。
領収書を捨ててしまった納税者が、記憶の範囲内で経費を算定して、個人事業主が自分自身で収入と経費から利益を計算し、申告書を提出して税金を払ったとします。
この行為自体は、まさにこの申告納税制度そのものです。
つまり、申告書を税務署に提出する時点で、税務署から「この経費は認められない」ということはあり得ないということです。
かといって、税務署の相談会場で、「家族との旅行代や食事代を経費にしていい?」とか「別荘の水道光熱費を経費に計上してあるけれど」などと税務職員に伝えたら、それは当然「この経費は認められません」と一刀両断されるでしょう。
申告納税制度は、納税者自らが税法を正しく理解し、その税法に従って正しい納税をする制度であり、嘘偽りを自由に申告していいということではありません。
それでも、中には売上の一部を隠したり、払ってもいない架空の経費を計上したり、プライベートの支払を経費にもぐりこませたりする人たちがいるのも事実です。
もちろん、そういった行為を働くのは一握りの人たちなのですが、本来納める税金より少ない税金を払って「私の税金はこれで確定」と申告納税制度を悪用している人をそのままにしておくのは、課税の公平の面から大きな問題です。
その問題を解消するために、税務署による税務調査というものが存在します。
税務調査は、ごまかして申告している人はもちろんのこと、きちんと正しく申告している人にも調査を行います。
それは本の表紙を見ただけでは中身が分からないのと同じように、確定申告書や決算書を見ただけでは、正しい申告が行われているか分からないからです。
さて、ここで領収書を捨ててしまった事業主の話に戻りましょう。
申告納税制度のもと、申告書提出時点では、経費が認められる認められないの話にはならないことは先述しました。
それでは、この事業主が税務調査を受けることになったらどうなるのでしょう?
領収書のない経費は認められるのか?それとも認められないのか?
これに対しては「両方あり得る」というのが回答です。
論点となるのは次の2つ。
①経費の信憑性
②課税関係
①は言葉通り、記憶の範囲内で計上された経費に信頼性があるかどうかです。
要は正しい申告がされていることが大事なわけですから、領収書がなくてもその申告が本来あるべき経費を反映して、正しい利益に近い計算がなされていると判断されれば、否認(経費として認められないこと)される可能性は低くなるのではないかと思います。
もうひとつが②の課税関係。
これは取引相手の課税の問題であり、①より難しい問題です。
課税関係というのは、たとえば、建築業の人が現場で臨時的に人工代を10万円現金で払った場合を想像してください。
その際、お金を受け取った人に領収書を請求しても出してくれなかったというケース。
この場合は領収書を捨ててしまったのではなく、最初から相手が領収書を発行しなかったわけですから、払った側がなんの落ち度もないように思います。
お金をもらった側が領収書を発行しないというのは、なんとなく理由はわかると思います。
10万円をもらったということは明らかにしたくない
⇓
だから領収書を発行しない
⇓
10万円をもらった事実を隠せるはず
⇓
10万円は収入として申告しない
⇓
その分の税金は納めなくてすむ
本来この10万円は、受け取った側が売上として申告し、払った側が経費として申告します。
つまり10万円について売上として課税が行われその分の税金が発生し、経費として計上し課税所得を減少させてその分の税金を減らす。
当たり前の話ですよね。
しかし、仮にこのケースで、10万円に対して売上の課税が行われないで、10万円を払った側では経費を計上して税金を減らしてしまうとなると、これはどうでしょう?
これが課税関係の問題です。
ある取引があれば、必ず売上課税と経費課税が行われなければいけないというのが基本なのです。
となると、売上課税が行われないその10万円について、「支払ったあなたが面倒みなさい」ということにもいなりかねない。
払った側に落ち度はないのですが、「脱税を生み出すことになりかねない領収書を発行されないような取引はしないように」という、こういったケースがあるのは重々承知した上での税務署の厳しい姿勢なのです。
もちろん、領収書を発行してくれなかったとしても、領収書のない経緯、支払年月日、支払先の住所氏名、支払金額、支払内容を立証できるのであれば、税務署も否認するということはないでしょう。
その場合には逆に「先方に税務調査に行ってくれ」と言えるでしょう。
そして、この課税関係の問題は、本記事の論点である領収書を捨ててしまった場合でも、領収書が発行されない場合と同様の税務署対応がされることもあるのです。
表面上、「領収書がない」という点では同じだからです。
しかも記憶や現状の取引状況からの推計での費用計上ですから、税務署も強い姿勢で臨んでくることも考えられるのです。
以上のとおり、税務署は税務調査で経費の信憑性や課税関係の問題を総合的に判断して、領収のない経費を認める場合もあるし、認めない場合もあるというのが、最終的な回答となります。
認められなかった場合に事業者側はどう対応したらよいのか?
これについては、私がその事業者に関与していた場合の対応であり、一般論でお話することではありませんので、このブログの場では適当ではありませんので記載は控えさせていただきます。
スミマセン、、、ちょっと長すぎましたね
文才ないとこんなふうにダラダラ文章になってしまうんです(笑)
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