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非居住者の退職所得の選択課税制度

外国人が日本の会社に勤務していて、本国へ帰国した後に退職金をもらうケースがあると思います。

今日はそういった外国人の退職金に課された所得税の還付申告の話をしたいと思います。

原則として、日本人や外国人に関係なく、日本国内で働いて受け取った給与や退職金の所得税の取り扱いは一緒です。

給与であれば毎月の給与の額に応じて所得税が源泉徴収され、退職金であれば「退職所得の受給に関する申告書」することによって退職所得控除を適用して税金を計算します。

ただし、日本国内に住所がない人(非居住者)に対して支払われる給与や退職金には、一律20%の税率で所得税が源泉徴収されます。
(所得税法164②、169、170)

給与については、その20%の源泉徴収によって課税関係は終了します。

つまり所得税が引かれっ放しで終わりです。

帰国した外国人に支払われる退職金は、日本国内に住所のない非居住者に支払われる退職金ですから、同様に20%の所得税が源泉徴収されることになります。

ところが、退職金には給与の場合と違って、「退職所得の選択課税」という制度があります。
(所得税法171)

これは、この制度を選択して確定申告することによって、日本に住んでいる人と同じように退職金の税金計算をして、源泉徴収された所得税の還付を受けられるというものです。(所得税法173)

退職金の税金は、(退職金の総額-退職所得控除額)×1/2×税率 という計算式で算出します。

この計算で算出された税金よりも、20%で徴収された所得税の方が多ければ、その差額分が還付されることになります。

「退職所得の選択課税」の申告をする時は、納税者はすでに帰国してしまっているので、納税管理人を選任して、納税管理人を通じて申告することになります。

ただ「退職所得の選択課税」の申告書の記載方法はちょっと特殊です。

所得税法施行規則第70条に規定する事項を記載すればOKなのですが、その記載事項に対応した退職所得の選択課税専用の申告書用紙というのがないので、通常は確定申告書B様式(第1表と第2表)と申告書第3表(分離課税用)に便宜修正を加えて記載することになります。

私が税務職員時代に納税者の方々に指導していたときの記載方法を紹介しておきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

≪第1表≫

①「平成○年分の所得税の  申告書B」の「所得税の」部分を二重線で末梢して、上部に「退職所得の選択課税」と記載する。

②住所欄の上段には、納税者の提出時の住所(本国の住所)を記載して、下段には、(出国時)と付記して出国直前の住所を記載する。

③「平成○年1月1日の住所」を二重線で末梢して、住所記載欄に(納税管理人)と付記して、納税管理人の住所・氏名を書いて、納税管理人の印を押す。

④氏名欄等は、納税者の氏名・生年月日等を記載するが、押印は不要。

⑤「還付される税金の受取場所」は、納税管理人の預金口座等を記載する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

≪第2表≫

①「平成○年分の所得税の確定申告書B」の「所得税の確定」部分を二重線で抹消して、上部に「退職所得の選択課税」と記載する。

②住所欄の上段に(提出時)、下段に(出国時)と付記して、第1表同様にそれぞれの住所を記載する。

③氏名欄には本人氏名。下線部の下の余白に(納税管理人)と付記して納税管理人の氏名を記載する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

≪第3表≫

①「平成○年分の所得税の  申告書(分離課税用)」の「所得税の」部分を二重線で末梢して、上部に「退職所得の選択課税」と記載する。

②住所欄は、上段に(提出時)、中段に(出国時)、下段に(納税管理人)と付記して、それぞれ提出時の住所、出国時の住所、納税管理人の氏名を記載する。

③氏名欄には納税者の氏名を記載する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

文章で書くとかなり分かりずらいかもしれませんね~(私の文章力の無さが原因ですけど

それから大事な留意点が4つあります。

①退職金の総額は、国外源泉所得となる退職金も合計して計算する。

②勤続年数は、非居住者期間も含めた全期間で計算する。

③すべての所得控除の適用はなし。つまり、第1表の左半分(収入金額等、所得金額、所得から差し引かれる金額の欄)と、第2表の右半分(所得から差し引かれる金額に関する事項、住民税・事業税に関する事項)には何も数字が入らないことになります。(かなりアッサリした申告書になります)

④負担軽減法に基づく定率減税の適用はなし。

この4つは気を付けていないと、計算結果が全く違ったものになってしまいますので注意してください。

最後に、いつ提出ができるかということですが、退職金を受け取った年の翌年1月1日以後にできます。(所得税法173①)

ただし年内に選択課税の対象となる退職金の総額が確定した場合には、確定した日以後に提出することができます。(所得税法173①かっこ書)

≪関連記事≫
外国人の所得税の還付申告~2009.5.19

(外国人・非居住者の所得税確定申告の料金~2011.8.23)

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当記事は、掲載日時点における法律等に基づいて記載しており、個人的見解も含まれておりますので、同記事を参考にされた結果、損害が生じたとしても、責任を負うものではありません。

ご質問が非常に多く寄せられるため、現在コメントの受付を停止させていただいております。
また非居住者に関する税務について事務所へのお問い合わせも多く、対応が十分にできない状況のため、現在、非居住者の税務相談は行っておりませんので、あらかじめご了承ください。

小暮会計事務所
さいたま市緑区馬場1-13-1

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コメント

海外税務はどうも難しくていけませんね!
記載方法はとてもわかりやすかったですよ(^o^)

そう言って頂けると有り難いです!
海外税務は条文より経験値がモノを言う世界です。
近年流行り(?)の移転価格なんて基本的に租税特別措置法第66条の4だけですからね。
まさに経験値の世界です。

こんな制度あったんですね!
滅多にないケースでしょうが知らないと損しますね。

kool Den様の仰る通り、大手企業は別としてあまりないと思います。

私が税務署の個人課税部門に在籍していたときも、数えるほどしか見たことありません。

専門書を読んでも退職の選択課税についてはあまり書いてないです。
申告できると書いてあるだけで具体的に書かれていません。
レアケースなのでしょう。
記載の仕方参考にさせてもらいます。
ありがとうございます。

アナログ様、コメントありがとうございます。
海外の子会社や関連会社と人的交流がないと、あり得ない申告ですから、対象者がいる会社というのはほぼ固定されていると思います。

上段に○○、中段に△△等書きましたが、記載方法はそれほど厳密に考えなくてもいいと思います。
あくまで参考ということでお願いしますね

古い記事にコメントしてすみません。

外国人技能実習生が厚生年金の脱退一時金申請をする際にこの制度を利用します。
財団法人国際研修協力機構の統計だと、年間10万人くらいは対象になるかと。
決してレアケースではありません。

また昨年から入管法が改正されて厚生年金加入期間が24ヶ月→最大35ヶ月に増えたため、
脱退一時金の所得税還付金額も大きくなっていますが、
受入企業はほとんどが中小企業で、制度をご存じない会社担当者が多い。

専用の書類がないのもおっしゃるとおりで、同じ管轄区域内の税務署でも追記事項や修正方法が違うのも悩ましい。

何とかしてほしいところです・・・

通りすがり様、コメントありがとうございます。

確かに人的国際交流が年々盛んになり、中小企業にとっても外国人に退職金を払うというのは、もはやレアケースではないのかもしれませんね。

そう考えると申告書の記載方法は通常通りとして、「退職所得の選択課税届出書」のような帳表様式を作り、所定の事項を記載するような形がよいのかもしれません。

そして年末調整の書類送付時などに、この取扱いについてのリーフレット等を同封するというのも、中小企業への周知という点で大事なことでしょうね!

いろいろ考えさせられるコメント、ありがとうございましたm(__)m

私の知り合いの外国人技能実習生が帰国し、厚生年金の脱退一時金の申請をした後、そこにかかる所得税20%を戻す手続きをしたいとのこと。、「退職所得の選択課税届出書」を提出して、という手続きですが、納税管理人に私になってほしいとのこと。他にも何人かそのような友達がいるので、みんなの納税管理人になってくれないか、と頼まれました。数人の納税管理人になることはできるのでしょうか。その場合、税務署の私の情報に、何人もの納税管理人になっている、という情報が書き込まれることになるのでしょうか。外国人技能実習生にとっては、お金が戻ってくる、大切な制度なので、ほかの知り合いの技能実習生が、帰国する際にもできることなら手助けをしてあげたいと思いますが、法的に大丈夫なことなのか、税務署での私の情報はどのような形になるのか、わかれば教えていただければと思います。

みーこ様、ブログという公の場で答えられる範囲でお答えいたします。

まず、複数の納税者の納税管理人になれるかというご質問ですが、法的に問題なくなることができます。実施にそのような方はいらっしゃいます。

次に納税管理人の情報管理についてですが、税務職員時代に知りえた業務上の秘密に重なる部分もありますので、その詳細をお答えするのは差し控えさせていただきます。

ただ当然想像はつくと思いますが、税務署が書類の不備や申告内容について聞きたいときに、速やかに連絡が取れるように、どの納税者の納税管理人は誰なのかという管理はされているとお答えしておきます。

ちなみに納税管理人は個人でも法人でもなることができます。

このような回答になりますが、よろしくお願いいたします。

詳しいご説明ありがとうございます。非居住者として一昨年7月に支払いを受けた退職所得の支払調書を確認したところ、退職金の支給額(控除前の金額)の20%が源泉徴収されていました。
これから納税管理人に選択課税による還付の申請をしてもらおうと考えていますが、還付の申請期限はございますか?一年半が過ぎているので遅すぎなければ良いのですが。
また、退職所得にかかわる源泉徴収票が発行されていませんので代わりに支払調書を税務署に持参すれば宜しいでしょうか?(所得税にかかわる源泉徴収票は一昨年の出国時の準確定申告で提出済み)
宜しくお願い致します。

ようこ様、一般論としてお答えいたします。
退職所得の選択課税による還付申告も、通常の還付申告と同様に、申告ができることになった日から5年間することができます。
一昨年に退職金を受領したのであれば問題ないでしょう。

また源泉徴収票関係ですが、退職所得の種類によって発行されるものが違いますが、一般的には、ようこ様がお持ちの支払調書でよろしいかと思います。原本提出は義務付けられていないためコピーでも構いません。
また厚生年金の脱退一時金支給決定通知書がある場合には、そのコピーも準備された方がいいかもしれません。
まずは出国時の住所地を所轄する税務署に、必要書類の確認とコピーでいいかどうかの確認をされた方がよろしいでしょう。

ベトナムに住んでいるのグエンです。はじめまして
支給決定通知書をもらいましたが、納税管理人はいませんがいまどうしたらいいですか?
自分でできますか?教えてお願い致します。

グエン チャン ダ グエン 様 はじめまして。

納税管理人が現在いないのでしたら、日本にいる友人や知人に依頼する必要があります。
また会社も納税管理人になることができるので、勤めていた会社に相談してみるのもよいかと思います。あるいは会社の税理士が納税管理人になってくれるかもしれません。

納税管理人が決まったら、納税管理人がグエン様の申告を代理で行うことになります。
税務署によって必要な書類が少し違う場合がありますので、納税管理人が税務署に行って、申告方法や必要書類をきちんと確認した方がよいでしょう。
申告する税務署は、グエン様が出国直前に住んでいた住所地を管轄する税務署です。

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